全盲の私がRokidスマートAIグラスを体験スマホを出さずに使える便利さと、歩行ナビへの期待

RokidスマートAIグラスを装着した様子。一般的な黒縁メガネに近い外観です。

最近、視覚障害者の間でもAIグラスが話題になっています。

AIグラスを装着して話しかけるだけで、目の前にある物を説明してもらったり、文字を読んでもらったりできるようになれば、視覚障害者の日常生活は大きく変わる可能性があります。

私も以前からAIグラスに関心を持っていました。今回、RokidスマートAIグラスを実際に使う機会があり、昼食時の商品やメニューの確認と、約1時間の歩行場面で体験しました。

先に結論をお伝えすると、スマートフォンを手に持たずに目の前の情報を確認できる便利さには、大きな可能性を感じました。

一方で、現時点では、普段iPhoneで利用しているAIアプリと比べて、購入価格に見合うほどの違いはまだ感じられませんでした。特に、私が最も期待していた歩行中のナビゲーションについては、音声だけで操作や案内を完結できず、今回は購入を見送ろうと考えています。

ただし、今後の改良には大いに期待しています。

普段はiPhoneのAIアプリを利用している

私は普段、iPhoneのBe My Eyesなどのアプリを使って、次のようなことを行っています。

  • 目の前にある物を説明してもらう
  • 商品名や値段を確認する
  • メニューや印刷物を読んでもらう
  • 周囲の状況についてAIに質問する

スマートフォンのカメラを対象物に向けると、AIが画像を確認して説明してくれます。以前と比べると、視覚障害者が自分で得られる情報は大きく増えました。

しかし、使用するときにはスマートフォンを取り出し、カメラを対象物へ向ける必要があります。AIグラスで同じことができれば、スマートフォンを手に持つ必要がありません。メガネに話しかけたり、耳元の部分に触れたりするだけで、目の前の情報を確認できます。私は、そこにAIグラスならではの価値があるのではないかと期待していました。

今回体験したAIグラス

今回体験したRokidスマートAIグラスは、見える人も一般的に使うことを想定した、ディスプレイ付きのモデルです。メガネのレンズ部分に、文字や地図、進行方向などの情報を表示できます。

体験したモデルは10万円程度との説明でした。また、体験時には、ディスプレイを必要としない視覚障害者向けに、画面表示を省いたモデルを5万円程度で提供する構想もあると伺いました。価格や販売方法については、正式な情報を確認する必要があります。

私は全盲のため、メガネに表示される画面は利用せず、音声を中心に体験しました。

商品やメニューの確認は便利だった

最初に、昼食を食べる場面で使ってみました。目の前の商品について説明してもらったり、メニューを読み上げてもらったりしました。こうした使い方は、比較的簡単に行うことができました。

特に便利だと感じたのは、スマートフォンを手に持たなくてもよいことです。

例えば、お店でお弁当を手に取ったとします。スマートフォンを使う場合は、お弁当を持ちながらスマートフォンを取り出し、カメラを商品へ向けなければなりません。

AIグラスであれば、お弁当を持ったまま、メガネに触れるだけで商品名や値段を確認できます。あらかじめ商品説明のショートカットを設定し、メガネに触れるだけで目の前の商品を説明してくれるようになれば、買い物の場面ではかなり実用的だと思います。

メニューや商品を確認する機能自体は、現在のiPhoneでも利用できます。しかし、スマートフォンを取り出して構える必要がないことは、AIグラスの大きな利点です。

約1時間、実際の歩行場面で試した

昼食後には、約1時間、実際に一人で歩く場面を想定してAIグラスを試しました。

右手には白杖、左手には「パームソナ」という超音波式の歩行補助機器を持って歩きました。歩行訓練士の方にも見守っていただき、私がAIグラスを使いながら歩く様子を確認し、撮影してもらいました。

私が今回、最も試したかったのは歩行中のナビゲーションです。商品説明や文字の読み上げだけであれば、すでにiPhoneでもかなりのことができます。

それに対して、白杖やパームソナを両手で使用しながら、スマートフォンを持たずに音声でナビゲーションを受けられるのであれば、AIグラスを購入する大きな理由になると考えていました。

右手に白杖、左手にパームソナを持ち、AIグラスのナビゲーションを試している様子。

普段の歩行で使っているGoogleマップとVoiceVista

私は普段、一人で歩くときには、Googleマップの徒歩ナビを利用することが多くあります。点字ブロックがある場所では、点字ブロックを歩行の手がかりとして利用しています。

一方で、点字ブロックや建物など、足がかりや手がかりとなるランドマークが少ない場所もあります。そのような場所では、「VoiceVista」という視覚障害者向けの歩行支援アプリも利用しています。

VoiceVistaには、目的地や目印となる場所を登録できます。登録した場所へのナビゲーションを開始すると、目的地までの距離と方向を確認できます。

例えば、「目的地まであと35メートル」といった距離が分かります。また、スマートフォンを目的地の方向へ向けると振動するため、目的地がどちらにあるのかを確認しやすくなっています。

私は普段、Googleマップ、VoiceVista、点字ブロックや周囲のランドマークなどを組み合わせて歩いています。

AIグラスで知りたかった経路情報

今回、私がRokidスマートAIグラスに期待していたのは、普段スマートフォンで確認している経路情報を、音声だけで確認できることでした。具体的には、次のような案内です。

  • 目的地まで、あと何メートルあるのか
  • 次の曲がり角まで、あと何メートル歩けばよいのか
  • 次は左と右のどちらに曲がるのか
  • 現在地が予定している経路上にあるのか
  • 目的地が現在地からどの方向にあるのか

右手に白杖、左手にパームソナを持っていると、スマートフォンを操作するためには、どちらかを一度持ち替えたり、立ち止まったりする必要があります。

こうした情報をAIグラスに話しかけるだけで確認できれば、両手で普段の歩行用具を使ったまま、ナビゲーションを受けることができます。私は、そこにAIグラスの大きな価値があると考えていました。

ナビゲーション機能はあったが、案内の中心は画面表示だった

実際にナビゲーションを設定してみましたが、その後もスマートフォンを操作する必要がありました。目的地の設定から経路の確認までを、AIグラスとの音声のやり取りだけで完結させることはできませんでした。

また、私が知りたかった目的地までの距離や、次に曲がる方向なども、音声では十分に確認できませんでした。

体験後に見える方から教えてもらったところ、メガネのディスプレイには、Googleマップのような地図や進行方向を示す矢印が表示されていたそうです。見える人にとっては、スマートフォンの画面を見なくても、メガネのディスプレイに表示される矢印を確認しながら歩けるため、経路が分かりやすくなっていました。

つまり、このAIグラスにナビゲーション機能がなかったわけではありません。ナビゲーションの情報は提供されていましたが、その中心がメガネのディスプレイによる視覚的な表示だったということです。

全盲の私には、画面に表示された地図や矢印を確認できません。画面に表示されている情報と同じ内容が、「50メートル先を左です」「目的地まであと120メートルです」「経路を外れています」などと音声でも案内されれば、視覚障害者にとっての使いやすさは大きく変わると感じました。

画面を外して安くするだけでは足りない

体験時には、ディスプレイを必要としない視覚障害者向けに、通常モデルの半額程度となる5万円で提供する構想もあると伺いました。視覚的なディスプレイを使用しない全盲者にとって、画面を省いた分だけ価格が安くなることはありがたいことです。

しかし、単にディスプレイを取り外すだけでは、視覚障害者向けの機器として十分ではありません。ディスプレイに表示されていた地図や矢印、目的地までの距離、曲がる方向などの情報を、音声や振動で受け取れることが重要です。

画面を外すのであれば、画面に表示される情報を、別の方法で確実に伝える仕組みが必要です。視覚障害者向けの価格設定だけでなく、視覚情報をどのように音声情報へ置き換えるのかが、今後の重要な課題だと思います。

iPhoneと比べて感じたこと

今回体験した範囲では、目の前の物の説明、商品の確認、文字やメニューの読み上げといった機能は、現在iPhoneのAIアプリでも行えます。

AIグラスの利点は、スマートフォンを取り出したり、対象物へ向けて構えたりする必要がないことです。これは、実際に使ってみると便利でした。

一方で、AIによる説明内容そのものについては、iPhoneと比べて大きな違いがあるとは感じませんでした。また、最も期待していた歩行ナビゲーションについても、音声だけでは操作や経路確認を完結できませんでした。

私にとっては、「スマートフォンを手に持たなくてよい」という便利さのために、現時点で5万円を支払うかどうかが判断のポイントになります。今回の体験だけで考えると、今すぐ購入するほどの違いは感じられませんでした。そのため、私はもうしばらく様子を見ようと思います。

どのような人には便利か

今回、私は購入を見送ることにしましたが、すべての視覚障害者に必要がないということではありません。次のような方には、現時点でも便利な可能性があります。

  • スマートフォンを取り出して構えることが難しい方
  • 手に商品や荷物を持った状態で確認することが多い方
  • スマートフォンのカメラを対象物へ向ける操作が苦手な方
  • 商品やメニュー、周囲の状況を頻繁に確認する方
  • 新しい機器を試し、自分に合う使い方を工夫できる方

逆に、現在iPhoneのAIアプリを問題なく利用できている人は、購入前にスマートフォンとの違いを十分に確認した方がよいと思います。

体験できる機会があれば、自分が最も使いたい場面で試すことをおすすめします。商品説明を試しただけでなく、買い物、移動、文字の確認など、実際の生活に近い場面で使うことで、自分に必要な機器かどうかを判断しやすくなります。

支援者の方にも知ってほしいこと

視覚障害者支援の立場からAIグラスを検討するときには、単に「目の前を説明できる機器」として考えるだけでは不十分だと思います。利用する本人が、AIグラスで何をしたいのかを確認することが大切です。

商品を確認したい人と、歩行中に経路を確認したい人では、必要な機能が違います。見える人にとって便利な画面表示があっても、その情報が音声化されていなければ、全盲者は利用できません。

製品を評価するときには、次の点を確認する必要があります。

  • 画面に表示される情報が音声でも提供されるか
  • 音声だけで目的地を設定できるか
  • スマートフォンを触らずに操作を完結できるか
  • 本人が普段使用しているアプリより便利になるか
  • 本人が使いたい生活場面で実際に試せるか

「AIグラスだから視覚障害者に便利だろう」と考えるのではなく、現在使っているスマートフォンや歩行支援アプリと比較することが重要です。

今回の体験を終えて

今回、RokidスマートAIグラスを体験し、スマートフォンを手に持たず、メガネに触れたり話しかけたりするだけで、目の前の情報を確認できることには大きな可能性を感じました。商品やメニューを確認する場面では、すでに実用的な便利さがあります。

一方で、私が最も期待していた歩行ナビゲーションでは、メガネのディスプレイに表示される地図や矢印の情報を、音声で十分に受け取ることができませんでした。現在の私にとっては、GoogleマップやVoiceVistaなど、iPhoneで利用している方法の方が、目的地までの距離や方向を確認しやすいと感じます。

そのため、現時点では5万円を支払って購入するほどの違いは感じられず、今回は購入を見送ることにしました。

しかし、AIグラスに期待していないわけではありません。両手で白杖やパームソナを使ったまま、メガネに話しかけるだけで、「目的地まであと何メートル」「30メートル先を右」「目的地は現在の向きから左前方」といった案内を受けられるようになれば、視覚障害者の移動を支える非常に実用的な機器になると思います。

また、ディスプレイに表示されている情報が、音声や振動でも同じように提供されるようになれば、見える人だけでなく、視覚障害者もAIグラスの機能を十分に活用できます。

今回は購入を見送りますが、今後のバージョンアップと、視覚障害者向け機能の充実には大いに期待しています。

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カテゴリー候補:視覚障害、ICT・AI、ロービジョンケア

タグ候補:AIグラス、Rokid、視覚障害、全盲、歩行支援、VoiceVista、Googleマップ、Be My Eyes、白杖、パームソナ

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